LINEで送るジェラートづくりに情熱を捧げた30年
2000年以上の歴史を持つ、関東屈指の古社として知られる秩父市の象徴・秩父神社。神社前の大きな交差点の一角にあるのが、白壁に映える水色のドアが爽やかな「SUN DOLCE」です。ここは秩父っ子が愛してやまないジェラートショップ。地元の人たちや観光客が絶え間なく足を運ぶ人気店です。
「いらっしゃい」と出迎えてくれたのは、1989年に店を立ち上げた初代オーナーの山上定信さん。実はこの前後にテレビ番組の撮影があったそうで、放映前にもかかわらず噂を聞きつけたお客さまで店は大忙し。それでも穏やかな笑顔で迎えてくださいました。
ジェラート作りを始めたのは店を立ち上げる数年前のこと。お兄さまが秩父で洋菓子のパティシエをしていたそうで「そのころ、ケーキといえば冬のお菓子。夏場はどうしても売り上げが落ちるんです。そこで展示会に出かけて、出合ったのがジェラート製造機でした。『これは面白い』と感じて、レシピを教えてもらうことから始めました」
今までのレシピの数を尋ねると、「今は作っていないものも合わせたら数え切れないほど。50も100もあります（笑）」。今でも大切に保管されているノートには、たくさんのレシピがびっしり。ジェラート職人山上さんの歴史が凝縮されているようでした。
県内で最初のジェラート専門店
お兄さまの店は西武秩父駅から徒歩５分ほどの矢尾百貨店の中にありました。山上さんはその店の閉店に伴い、テナントを引き継ぐ形で1989年に「サンドルチェ」を開業。当時はまだ埼玉県内にジェラートを提供する店がなかったこともあり、反響が大きく忙しい毎日だったといいます。
「百貨店は休みがなくてね。だからこどもが小さいころにはどこにも連れて行ってやることができなかったんですよ」と山上さん。それでも、毎日ジェラート作りに情熱を捧げていたお父さんの姿を見ていた娘さんが、今は２代目オーナーになりました。
２号店（番場店）をオープンしたのは2016年1月。開店当日は雪だったにもかかわらず、多くの人が訪れたといいます。「ここだけでは製造が間に合わなくて、矢尾からも自転車で何往復もしながらジェラートを運んだんですよ」と当時の様子を懐かしみます。
２号店出店に伴い矢尾百貨店からは一度撤退したものの、その後復活。秩父の人たちにとって、それだけ大切な存在なのでしょう。
秩父愛をギュッと練り込んだサンドルチェのジェラート
この店のジェラートが秩父人の心を掴んで離さない理由は、店内のショーケースを覗けば分かります。定番メニューから旬の味まで常時16種類、なかでも目を引くのが秩父愛にあふれたメニューの数々です。
秩父産ラズベリーを使ったシャーベットは、さっぱりと甘酸っぱくて果実もたっぷり。鮮やかな色をしていますが、これは着色料ではなく自然の色合いなのだそう。素材をぜいたくに使った番場店限定の人気商品です。
日本一に輝いた秩父自慢のウイスキー「イチローズモルト」、秩父を代表する日本酒「秩父錦」や秩父ワインなど、秩父の銘酒もジェラートに。特に秩父錦は早くからレシピを開発した看板商品のひとつだそうです。お酒が多いと生地が固まらないので、使用量は香りづけ程度。ミルキーな生地がベースで、口に含むとお酒の香りがほんのりと鼻に抜けていきます。
極め付けは秩父のご当地グルメ「みそポテト」！ 揚げたじゃがいもと味噌だれを練り込んだ甘じょっぱいジェラートはクセになる味です。
さらに味のベースとなる牛乳も埼玉産。自然素材にこだわり、地元食材を多く取り入れるなど、丁寧にジェラート作りに向き合うサンドルチェだからこそ、長年愛され続けているのです。
それにしてもユニークな素材を組み合わせる大胆な発想。一体どこから来ているのでしょう。実は山上さん、かつて役者としてコマ劇場の舞台に立っていたことがあるそうです。柔軟なアイディアは、そのころの経験に培ったものなのかもしれません。
そしてシングル350円、ダブル450円（ワッフルコーンは＋20円、ラズベリーは＋50円）という価格設定も良心的！ お小遣いでも通えるのが嬉しいですよね。
店内ではジェラートの他に、フルーツをぜいたくに使ったクレープやフルーツスカッシュなども販売しています。
「こどものころ、親戚に連れていってもらった喫茶店で食べたのが、銀のお皿に乗ったアイスクリーム。それがなんとも言えずおいしくてね。あれが原点なのかな」。その時の感動を今は与える側になった山上さん。
「せっかく秩父に来たなら、サンドルチェのアイスを食べて行って」。秩父の人たちが胸を張る、そんなお店であり続けることでしょう。
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