秩父の人達が愛するソウルフード「ホルモン焼き」
秩父といえば「わらじかつ丼」に「くるみそば」、「豚みそ丼」や「みそポテト」など、多彩なご当地グルメが楽しめるエリア。なかでも地元の人達が愛してやまないのが「ホルモン焼肉」です。市内には約40店のホルモン焼きの店が点在しています。
今回訪ねた「一番館」は1991年創業。今年30周年を迎えた地元の人気店です。
「戦後、荒川のダム建設をするために労働者の方が全国から集まってきたそうです。そしてその当時、このあたりは養豚場がたくさんありました。そのため新鮮なホルモンが手に入りやすい環境だったこともあり、スタミナ食として多くのホルモン店が誕生しました。安くてお酒ともよく合うホルモンは、仕事の疲れを癒すのに最高だったんでしょうね」
そう教えてくれたのは本間明子さん。30年前にお父さまと共に店を立ち上げ、現在は店を切り盛りするオーナーです。
「それまでホルモン店といえば、タバコの煙がモクモクとした"働く男たちの聖地"という感じ。こども連れのファミリーなどが楽しめる場所というイメージではありませんでした。それに、ホルモンが苦手な人が楽しめる焼肉の店もほとんどなかったんです。
だから、ホルモンが苦手でも家族連れでも、みんな一緒に楽しんでいただければと思い、牛肉も楽しめる焼肉店としてオープンしました」
幅広い層を対象とした焼肉店「一番館」は地元の人々に愛され、メディアでもよく紹介される秩父の名物店へと成長していきました。
バリエーションに富んだ新鮮ホルモンを味わい尽くす
一番館では備長炭の成形炭を使い、七輪で焼肉を提供しています。成形炭は火持ちがよく、ゆっくりと焼肉を楽しむのに最適な炭なのだとか。
パチパチと炭が焼ける心地よい音が聞こえ始めた頃、自慢の一皿「初めての秩父ホルモンセット」(1,480円)が運ばれてきました。
生モツにシロ、カシラ、タン、ハツ、レバー、トントロ、タケノコ、ガツの9種類の豚ホルモンの盛り合わせ。この一皿でいろいろな味が楽しめる名刺代わりの一皿です。
「まずはこのセットを召し上がって、気に入ったホルモンを追加オーダーいただくことが多いんですよ」
そして「これもぜひ、召し上がってみてください」と運ばれてきたのは2種類のナンコツ。
写真手前はコリコリとした食感が特徴の喉部分「まぼろしナンコツ」(50g300円)。一頭から50gしか取れない"うえナンコツ"と呼ばれる貴重な部位なのだとか。
また、写真奥の通常のナンコツメニュー(520円)は輪切りにしためずらしいスタイル。「ナンコツは厚く切るとどうしても固くなってしまいます。そのため、うちではお酒のつまみとしても食べやすく楽しめるよう、薄く切るようにしています」と本間さん。花びらのように美しく、「少しでもきれいに、目でも楽しめる焼肉を」という本間さんの思いも形になった一皿です。
この日は岐阜県高山市の市場から5等級の飛騨牛が入荷していました。ホルモンが苦手な人でも楽しめるようにという言葉通り、上質な牛肉や豚カルビ、豚の味噌漬けなどもメニューに並びます。また、秩父産の肉厚なシイタケは380円。軸の部分も添えられていて、しっかりとした旨味を味わうことができます。
おいしかったなら、お客さまが上手に焼いてくださったということ
ホルモンをおいしく味わってもらうためには、仕込みはどのような点に注意しているのでしょうか。
「ホルモンの扱いは丁寧な下処理と管理が重要です。余計な脂を削ぎ落としたり、小さな骨まできちんと取り除いたり。丁寧な仕込みを怠らないように心がけています」と本間さん。
温度管理はもちろんのこと、レバーは一度氷でしめてから成肉したのちに冷蔵庫で保存するなど、手間を惜しまずにしっかりと管理することが大切なのだそう。中には丁寧な下処理を施すことで半分くらいになってしまう部位もありますが、おいしいホルモンをお客さまに提供するためには「どれだけ捨てられるか」も重要とのこと。
「ホルモンでも焼肉でも、私たちがご提供するのは素材とタレ。自家製タレにはこだわっています。もみダレも塩が合うもの、甘めのものなど、部位によって変えています。おとなりの横瀬町で160年以上続く老舗『島田醤油店』のたまり醤油を使い、利尻昆布でしっかりと旨味を引き出すことで、特色が出るようにしています。
あとはお客さまがいかに上手に焼いてくださるかにかかっています(笑)。だから、私たちはできるだけお客さまの網や炭、火加減を注意して見るように心がけています。あとは、実はひっくり返せばひっくり返すほどおいしくなる。これがポイントなんです。そして七輪の窓で火力をうまく調節すること。だから"焼肉番長"は必要なんですよ」
本間さんに焼肉をおいしく食べるコツを教えていただいたとき、とても印象的だったのがこんな一言。
「食べ終わって『おいしかった!』と言ってくださるお客さまがいるんですが、それを聞くと、『お客さまが上手に焼いてくださったのだな』と思うんです」
「居心地がよくて、思い出に残る食事を提供する店でありたい」。思い出してもらえる店であるために、SNSなども積極的に使っているそうです。
「趣味は一番館」と朗らかに話す本間さんの笑顔に会いに、皆さんもぜひ足を運んでみませんか?
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