居心地の良さを誘うナチュラルな佇まい
ふたつの商店街が交わる人通りの多い場所にありながら、なんとも居心地の良い空間がそこにある。駅前から続く商店街の喧騒を抜けてすぐ。ナチュラルウッドの外観に、よく手入れされた花の鉢が店頭を飾る。
全面ガラスで設えられたドアを開けると、温かな木のぬくもりに囲まれた店内には先客がふた組。ランチを終えて、まだまだ楽しそうにおしゃべりに興じる3人の女性たち。そして新聞を広げてコーヒーを味わう男性は、ゆったりと自分時間を楽しんでいる様子だ。
大手カフェチェーンでの経験を生かしながら
店のオーナーである中元人司さんは、長く大手コーヒーチェーン「コロラド」での勤務経験を経て、この店を開業。
独立して店のオープンを目指し、物件探しをする中で偶然見つけたというこの場所は店の設備や内装がなにもない、いわゆるスケルトンの状態だったそう。一から店づくりができることも気に入り、契約に至った。
「最初、内装を依頼したデザイナーさんからの提案では厨房前にカウンター席があったのですが、自分は必要ないかな、と思って」と中元さん。8坪の店内にはスペースがあまりとれないことも理由のひとつだが「なにより幅広い人に気軽に利用していただきたい思いがあったんです。ここはあくまでもお客さまが自由に楽しんでいただく場所。お客さまとの距離感が近くなりすぎないよう心がけています」。
「お客さまとの距離感や考え方などは、以前勤めていたカフェチェーンと共通するものがあるんです」という言葉の通り、店内には新聞や雑誌も用意され、ゆっくりと過ごせる心遣いが感じられる。
元々、話し好きなマスターというキャラクターではないのでと笑う中元さん。常連さんがいつもカウンターにいてマスターとおしゃべりをしている。そういう店ではなく、訪れた人が思い思いの時間を過ごせるカフェを目指したのだとか。
入店した時に感じた居心地の良さは、その思いからきていたのだと腑に落ちた。
サイフォンを華麗に操る"サイフォニスタ"
店名に冠しているように、この店ではブレンドやストレートコーヒーをサイフォンで提供している。ちょっとレトロで理科の実験のようなフォルム、ポコポコと音を立てて湯が沸くまでハロゲンランプで照らされる水のきらめきやコーヒーが抽出されていく様子。コーヒー好きにとってはたまらない瞬間だ。
サイフォンで淹れるブレンドコーヒー(460円)はまろやかで香り豊か。中元さんがサイフォンにこだわるには、いくつかの理由がある。
「サイフォンはまろやかで香りの高いコーヒーを安定して淹れられるのが利点なんです。それにこの店は基本的にひとりで営業しているので、ハンドドリップだと手が離せなくなってしまう。それに比べ、サイフォンはセットすれば他の作業ができるので効率がいいんですよ」。
サッカーでいう"ファンタジスタ"のようにサイフォンを華麗に操る人でありたい。店名「サイフォニスタ」にはそんな思いが込められているんです、と笑いながら教えてくれた。
軽食、スイーツからシチューまで幅広いメニュー
週末、奥さまのヘルプがある以外はひとりで営業している「サイフォニスタ」だが、サイフォンを活用して効率化を図ることで幅広いメニューにも対応している。
中元さんのおすすめはホットサンド。表面を香ばしくサクッと仕上げたトーストに、たっぷりのコンビーフ、野菜サラダもセットされた「めちゃうまコンビーフサンド」(420円)をはじめ、サンドイッチメニューは3種類。
ほかにもパスタメニュー、シチューなどのフードメニューは時間に関係なく閉店まで提供。
さらに11:30まではドリンクにサラダ、ゆで卵、フルーツがセットになったトースト類(560円〜)のモーニングセットもあるという充実ぶりだ。
こだわりのコーヒーから懐かしいドリンクまで
ブレンドコーヒーは0度以下で熟成させる「氷温熟成」豆を使用。氷温熟成をすることで細胞が均一化し、まろやかで透明感のあるコーヒーになるという。また、キリマンジャロやマンデリン、ブルーマウンテンNo1などストレートコーヒーもサイフォンで淹れ、豆そのものの味を楽しめる。
ほかにもマシンで淹れるラテ類や紅茶、ココアなどが並ぶラインナップの中で、目を引いたのがちょっと懐かしいクリームソーダ(560円)。店の客層が比較的高いこともあり、懐かしさからついついオーダーしてしまう人も多いそうだ。
店内はスタイリッシュな雰囲気を持ちつつも、街に溶け込みあくまでも自然体。
そんな居心地の良さでついつい長居。気づけば、窓の外には夕飯の支度のための買い物客が足早に行き来し、赤提灯にあかりが灯っていた。
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