ご近所に喜ばれていたパンを販売することに
西武新宿線「高田馬場駅」から徒歩5分。神田川のほど近くに、3人も入ればいっぱいになってしまう、小さな小さなパン屋がある。扉を開けると、香ばしいパンの香りとともに、カウンターに並ぶ上品なパンが目に止まる。奥から店主の山本有巳枝さんが出迎えてくれた。
山本さんは都内の複数のパン屋で修業し、さらには自然食レストランのキッチンで働いていた経験を活かして、店の隣にあるアトリエで月に一度、おもてなし料理の教室を開講している。
パンをつくってはご近所に配り、とても喜ばれていたことから、「小さくてもいいので、自分ひとりでやれるお店を始めてみよう」と2009年にお店をオープン。
「最近は近くに専門学校ができて、留学生の方も来てくれるようになりました。外国の方にも『おいしい』って言ってもらえるとうれしいですね。おいしい味は世界共通なんだなって」。
すべての工程を、たったひとりで切り盛り
パンの種類は全18種。山本さんがひとりでパンを焼き、ひとりで接客を行う。開店時間にはサンドイッチ2種と「バナナブレッド」、「シフォンケーキ」が焼き上がり、11時にはすべてのパンが店頭に並ぶ。
「最初は食パンとバゲットだけのつもりだったんですけど、お客さまからリクエストを受けているうちに、いつのまにか種類が増えてしまって(笑)。自分もパンが好きで、お店によく行きますが、種類がたくさんあると楽しいですから」と山本さん。
街の人の声を大切に。地元に根ざしたお店づくり
朝早くからオープンしている理由は、近所のサラリーマンの方からのリクエスト。毎朝通勤前にサンドイッチを買いに来るのだという。毎日でも飽きのこないよう、日替わりで2種類のサンドイッチが並ぶ。
ほかにも、アトピーの方や赤ちゃん連れのお母さんが、卵や乳製品を使っていないパンを買いにくることも。なかでも最近人気の無塩パン(前日までに予約注文が必要)は、「塩分の摂取を控えている人にも食べられるパンを」との思いから開発したもの。
「対面式なので、つくっている人の顔が見えるのも安心できる要素なんだと思います。小麦粉は、国産、外国産問わず、おいしいものを厳選して使っています。粉の量が多めなので、ずっしりと重量感があり、生地もしっかりめ。パンだとおなかがすくという男性でも、食べごたえがあると言っていただけています」。
食べる人に合わせたパンづくりや街の人々の生活に合わせた営業スタイルなど、リクエストに柔軟に対応できるのも、自分ひとりのお店だからこそ。
「ひとりですべてやるのは正直大変です。でもその分、ひとりだから自由にできることもある。パンづくりはやっぱり楽しいですね」。小さくても、着実に、人々の暮らしの中に根づいている。
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