つくる弟と、売る姉と。どちらが欠けても成り立たない
「予約が多いから、電話対応がけっこう忙しいのよ。電話をとりながら、接客しながらで、ひとりでやっているのでお待たせしてしまうこともあるんですけど、いいお客さまばかりで助かっています」
屈託なく話す青木弘子さんは、弟でありオーナーシェフの青木学さんを店の立ち上げから支えてきた頼もしいお姉さん。28年間、学さんがずっとひとりでパンをつくってきたが、3年前からは修業時代の先輩にも来てもらうようになり、今は厨房ふたり、 店頭は弘子さんひとりの3人体制で店をまわしている。
取り置きのご指名が最も多いのが「パン・ド・ミー(260円)」。新井薬師の「八の市」に合わせて毎月8日、18日、28日は特売日で、全品20%オフという太っ腹ぶりだ。
「お客さまのことはすべて把握しています。食パンは何枚切りなのか、耳をとるのかとらないのか、領収書が必要なのかどうか。自分がしてもらって嬉しいことは、お客さまにもしたほうがいいですよね。マニュアルなんてなくて自己流だけど、だから楽しいんだと思います」と弘子さん。
店名は1970年代に放送された、パン屋が舞台のNHK朝の連ドラ『風見鶏』から取ったという。
13時に職人のふたりが上がってからは、閉店まで弘子さんひとりで切り盛り。「私にはパンは焼けないし、弟は接客が得意なわけじゃないから、そこはお互いの役目を任せ合ってるの。大変だけど、弟が作ったこんなにおいしいパンだから、そこは絶対にやっていきたいじゃない?」ときっぱり口にした。
姉弟の、お客さまとの信頼関係
取材中、会計時に財布を忘れたことに気がついたお客さまに、「お金はあとでいいから」と躊躇なくパンを渡した弘子さん。
「機械的に商品とお金のやりとりをするのではなく、お客さまとコミュニケーションをしっかりとりながら、信頼感をもってやっています。お店というのは、それを構築していかなければいけないと思うんですよね」と話していたのを、まさに地でいくようなエピソードに出くわした。
こどもに大人気の「チョコアンパンマン」と「チョココロネ」(140円)は、見えやすいよう最下段に陳列してあった。「チョコアンパンマン」はなんと、アンパンマンの生みの親・やなせたかしさんにも食べてもらったことがあるそうだ。
「姉弟仲はずっといいですよ。人間関係もうまくやっていかないと、お客さまにも伝わるでしょう」
Kazamidoriのパンにハッピーなムードが漂っているのも頷ける。
※価格はすべて税込
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※写真、記事内容は取材時(2016年11月10日)になります。