カレー屋さんが急増中の高田馬場の注目店
かつてはラーメン激戦区として名を馳せた高田馬場だが、現在は徐々にカレーを出す店が増えてきており、カレー好きが集う街になりつつある。そんなエリアで2017年7月にオープンしたのが「プネウマカレー」。店主・長谷さんのカレーへの情熱と、意外な出会いから誕生したお店だ。
裏路地の緩やかな坂道の途中にある、ターメリックカラーの看板が目印。
店内は7席ほどのカウンターのみだが、広めの作りでゆったり座れる。天井が高く、木材を多用しながらも明るくモダンな雰囲気の内装は、長谷さんがこだわって仕上げたそう。
天井は以前バーだった時のままだそうだが、なかなかオシャレ。
アンチョビのコクとフレッシュなスパイスがコラボしたカレー
仕込みから接客まで長谷さんが一人で切り盛りしているため、カレーの種類は少なめ。普段は「チキンカレー」(普通・580円)だが、木曜日と金曜日だけ限定で「辛口特製チキンカレー」(普通・630円)が登場する。チキンもビーフもスパイスの配合は違うが、イワシを塩漬けにしたアンチョビを加えているのが最大の特徴だ。アンチョビは、上質ないりこで知られる瀬戸内海の伊吹島から取り寄せている。
銀皿にのって登場する「チキンカレー」をひとさじ口に入れると、まず広がるのがスパイスの清涼感。カルダモンやナツメグを意識して多めに使っているそうで、鼻に抜ける爽やかな香りの後に、穏やかな辛さや甘みがじんわりやってくる。小さなお子さんからご年配の方まで、誰でも食べられるようにスパイスをブレンドしているため、辛さはそれほど強くない。刺激的な辛さをご所望の場合は、テーブルに置かれたチリペッパーを加えよう。
アンチョビを使っていると聞くと、ついつい「魚臭いのでは?」と想像してしまうが、玉ネギと一緒に炒めてあるので臭みが全くなく、カレーに深みとコクが生まれる。パクパク食べ進めるうちに深い旨みを感じるのは、アンチョビの効果だろう。
カレーはサイズ違いで4種類。「ご飯少なめ」も選べるので、女性やお子さまにも好評。
付け合わせに「ひよこ豆のピクルス」(50円)を。酸味がカレーに合う。
小笠原から伊吹島へ、そして高田馬場へと続くカレーの道
もともとは趣味でカレーを作っていた長谷さん。いつかは自分の店を、とカレー屋の開店を考え始め、修行しようと有名カレー店の面接を受けたが落選。そんな時に目に入ったのが、小笠原の外来植物駆除員を募集する求人広告だったそう。
7ヶ月間の小笠原生活で出会ったのは、休漁期で出稼ぎに来ていた香川県・伊吹島の漁師さん。いりこの材料となるカタクチイワシがたくさん獲れる伊吹島へ足を運んだ長谷さんは、イワシの加工などを手伝ううちに、「全部いりこにしちゃうんだったら、アンチョビも作ればいいのに」と自ら作ってみることに。折しも、2016年の瀬戸内国際芸術祭で観光客が多く訪れていた伊吹島で、「このアンチョビを使ったカレー屋をやってみたら?」と漁師さんに提案され、秋の1ヶ月間限定でアンチョビカレーの店を開店することになったのだそう。
伊吹島のお年寄りや小さなこどもたちまで、喜んで食べてくれたというカレーの味をひっさげ、「東京で勝負!」と一念発起した長谷さんは、準備期間を経て高田馬場で「プネウマカレー」をオープンさせた、というわけだ。
店名の「プネウマ」は、古代ギリシャ語で「息吹」や「風」といった意味があるそう。小笠原から伊吹島へ、さらに高田馬場へと、ひょんな出会いから生まれた長谷さんのカレー。伊吹島の風を感じさせながら、今日も手ごろな値段でサラリーマンや学生、ご近所ファミリーやお年寄り、さまざまな人のお腹を満たし続けている。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2018年5月14日)のものです。