配達がメインのパン屋さん

昼過ぎ、店の前に赤い車が止まった。配達を終えたスタッフが戻ってきたのだ。
「ベーカリーこのは」は、店先で販売もしているけれど、メインは会社などへの配達。毎週月曜日・金曜日の昼(12:00~13:00)には、豊島区役所で出張販売も行っている。

IMG_8770-e1497713513729.jpg

ガラス張りの販売スペースには本日のパンたちが並ぶ。
「レパートリーは150種類くらい。そのなかから定番5種ほどと、あとは日替わりでパンをつくっています。お昼に合わせて配達する関係上、お昼ごはんになるようなパンが充実しているんです」。

そう説明してくれたのは、特定非営利活動法人「このは」の就労継続支援B型事業所「このはの家」の施設長、蓮沼和音さん。精神障害を抱える方が利用する「このはの家」が、「ベーカリーこのは」を運営している。
ここでパンをつくり続けて10年以上になるという蓮沼さんは、大学では福祉を学んだ。社会福祉士、精神保健福祉士としてこのはのスタッフになったが、「まさかパン屋さんになるなんて思っていなかった」と笑う。

IMG_8789-e1497713647698.jpg

手前左「しそトマトピザ」(160円)、その右の「レモンチーズケーキ」(160円)、後ろの「マンゴーデニッシュ」(170円)は季節限定。さわやかな味わいで夏にぴったり。

働く人々の真ん中にパンがある

IMG_8794-e1497713719845.jpg

毎週金曜日はサービスデーで、15:00から全品100円になるのだそう(一部商品を除く)。

以前は駅の反対側にある作業所の小窓で販売していたが、2006年に今の場所に移転して小売スペースが確保できた。それでも間口が広いとはいえないが、カーテンの向こうの厨房は想像以上に広々としていて驚いた。1日あたり12~13人ものスタッフが来て作業するそうだ。「冷凍も一部使いますが、うちは基本的には生地から手づくりしているんですよ」とのこと。

作業場は総じて和やかな雰囲気で、「ワイワイ話しながらパンをつくれるのが楽しい」と蓮沼さん。統合失調症、うつ病など、スタッフはそれぞれにさまざまな事情を抱えている。しかし、ともに手を動かすことでコミュニケーションがとりやすくなり、それによって関係性や絆が生まれたり深まったりすることもきっとあるだろう。また、新しい商品の研究をしたり、売上を伸ばすためにできることを考えたりと、みんなで集まって話し合う機会も頻繁にあるそう。このはに関わる人たちの対話、人間関係、ひいては生活が、パンを媒介に循環しているのだ。

IMG_8802-e1497713836216.jpg

棚には、飾りたいものをおのおの持ち寄ってディスプレイ。スタッフの手づくりや、他の作業所の方の作品もある。

「『もっとたくさんのお客さんに来てほしいね』ってみんなで話していて。なので新商品も増やしてがんばりたいと思っているんです。個人的にやりたいこととしては、お酒が好きなので、つまみになるようなパンをつくりたいですね(笑)」と蓮沼さん。

IMG_8823-e1497713939902.jpg

焼きたてのパウンドケーキは色がきれい! 手前が「きなこ抹茶」(1切れ150円)、奥が「トマトチーズ」(1切れ200円)。

IMG_8840-e1497713976414.jpg

人気のパウンドは種類豊富。左が「ラムチョコ」(150円)、右が「フルーツ」(150円)。

さまざまなイベントに出店するなど「ベーカリーこのは」の活動はなかなかに積極的。お店やイベント出店情報などはブログで発信しているので、ぜひチェックしてみてください。
次に伺うときにはどんな新商品が並んでいるか、楽しみだ。

IMG_8836-e1497714049978.jpg

このはのスタッフの方たち。左から笹本さん、蓮沼さん、鈴木さん。


※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2017年6月14日)のものです。