かつて別荘地だった美しい庭園
国分寺駅南口を出て左に進むと、緑あふれる庭園の敷地が見えてきます。ここが今回訪れた「殿ヶ谷戸庭園」。駅から徒歩2分という好立地です。
窓口の手前には、この時期に見られる草花の写真が掲示されています。入園前に予習をしておくと、園内をさらに楽しめそうです。
今回は殿ヶ谷戸庭園サービスセンター長の山本さんに園内をご案内いただきました。
そもそもこの場所は、明治~昭和期の実業家である江口定條氏によって1913年(大正2年)~1915年(大正4年)に作られた別荘。江口氏は三菱合資会社の社員で、のちに南満洲鉄道副総裁から貴族院議員にもなりました。その後、同じ三菱合資会社の取締役であった岩崎彦彌太氏が1929年(昭和4年)にこの別荘を買い取り、しばらくの間岩崎氏の別邸として使われていました。
1974年(昭和49年)には都が買収して整備を行い、1979年(昭和54年)に有料庭園として開園。2011年(平成23年)9月には国の名勝に指定されました。
藤の花や山野草は春が見ごろ
園内に入って順路を進むと、右手には木斛(もっこく)が並び、左手には広大な芝生地が広がっています。背の高いケヤキの木や、鮮やかな赤松も見え、駅のすぐ近くとは思えないほど一面の緑に包まれました。
その先に見えるのは萩のトンネル。秋になると萩の花がきれいに咲くそうです。
トンネルの出口から少し進むと藤棚があります。取材に訪れた際は剪定後だったため、花はあまり見られませんでしたが、通常は4月下旬が見ごろ。推定樹齢80年以上になる見事な古木です。
藤棚の先には花木園があり、取材時にはシャガの花が咲いていました。「小道に生える野草群は、特に4月初旬ごろまでですと、花がたくさんついていてきれいです。山野草を目当てに来園されるお客さまも多いので、殿ヶ谷戸庭園の公式ツイッターでほぼ毎日、その日に咲いている山野草をご案内しているんですよ」と山本さん。
湧水でつくられた池とモミジを見下ろす「紅葉亭」
花木園のあたりは斜面になっています。この段差が「国分寺崖線」。武蔵野段丘と立川段丘の境界となる崖線で、立川市から大田区まで約30km続いているのだそうです。
斜面を降りた先の右手に広がっているのが、迫力のある竹林です。青々とした竹が空に向かって無数に伸びている様子に生命力を感じます。さらに左手の斜面には、3月下旬ごろになるとカタクリの花が咲くのだそう。
竹の小径を進んだ奥にあるのが、殿ヶ谷戸庭園の一番の見どころ。次郎弁天池と、その奥にたたずむ紅葉亭です。
次郎弁天池は、国分寺崖線の下から出てくる湧水によって形成されたもの。赤松やイロハモミジに囲まれた水面が美しくきらめきます。湧水源も間近に見ることができます。
滝の横にある石畳の階段を上がっていくと、数寄屋造り風の茶室・紅葉亭にたどり着きます。
「紅葉亭から見下ろすと、モミジと池の美しい景色が見えます。名前の通り、秋になると紅葉の赤色が本当にきれいなんですよ。11月下旬ごろにはたくさんのお客さまが訪れます」と山本さんは話します。
紅葉亭の手前には広めの休憩スペースが用意されています。ここで景色を見ながら昼食を食べる方もいらっしゃるそう。
※園内にはゴミ箱がないため、ゴミはお持ち帰りください。
また、紅葉亭の建物は有料施設になっており、半日または一日単位で借りることができます。お茶会や句会、食事会などで利用される方が多いとのこと。建物の扉を開けると室内からでも景色を楽しめます。
入園口近くの本館には展示室が用意されています。殿ヶ谷戸庭園の歴史や園内について、パネル展示や動画で紹介しているので、来園の際はぜひ立ち寄ってみてください。
季節の移り変わりとともにさまざまな表情を見せる殿ヶ谷戸庭園。今度の休日は、美しい庭園の緑を眺めて気分をリフレッシュしませんか。
※価格はすべて税込
※新型コロナウイルス感染防止対策により、営業時間が変更になる場合があります。