レトロな青いボンネットバス

自然豊かな山々を眺めながら歩くと、なんとも愛らしい青いボンネットバスが目に飛び込んでくる。こんもりと繁る木立の前に置かれたレトロなバスは、まるでアニメの世界に紛れ込んだような光景だ。

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ノスタルジックなムードをたたえた店内

バスのタラップを上がり、さっそく「むささび亭」の店内へ。入口付近にはハンドルやスピードメーターなどがそのまま残っており、ノスタルジックなムードにあふれている。実はこのバス、かつては横田基地でスクールバスとして活躍していたこともある本物の車輌だ。
「このバスは60~70年前に製造されたもの。スクールバスとして活用される前にも、おそらく軍用バスとしても使われていたはずなんですよ」と教えてくれたのはこの店のオーナー・川越康博さん。横田基地で払下げになったバスをカレーショップのために購入したという。

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「バスのカレー屋さん」として愛される存在に

「アメリカで作られたバスだから、横幅も広いでしょう」。
確かに向かい合わせに座席の後ろには通るスペースも作られている。窓からの光景も相まって、どこかゆったりと感じる非日常が漂っている。
「ここを始める前から、バスの中でカレーが食べられる店があったら面白いなと思っていて。探していたらこの車が払下げになると聞いて手に入れたんです」。
なんとバスありきでの開業だったのだという。

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実は川越さんは建築デザイナーでもあり、空間づくりはお手のものだ。車の中にいることを忘れてしまいそうになる開放感は、バスの天井部分を一度切り取って横壁の高さを足してある。もちろん、その大胆な発想も川越さん自身によるもの。約1年半の期間をかけ、手作りでバスを改造していったそう。
「建築家といっても実際に改造を手がけるのはまた別の話、試行錯誤もありました。でも楽しかったですよ」。
時折、友人に手伝ってもらうことはあったものの、ほぼすべてを自分の手で作り上げたという。そんな愛情ひとしおの改造バスで店をオープンして35年以上が経ち、今ではすっかり「バスのカレー屋さん」として定着。地元はもちろん、近隣の巾着田の曼珠沙華や日和田山ハイキングに訪れる人の楽しみのひとつにもなっている。
普段は週末のみの営業だが、曼珠沙華が咲き誇る時期にはフルオープンにして大忙しだ。

時間をかけて作る本格インドカレー

その昔、インドを旅したことがあるという川越さんが作るのは、複雑なスパイスと玉ねぎの甘み、トマトの酸味がひとつに溶け込んだ本格的なインドカレー。
国産食材を使用し、丁寧に8時間以上かけて仕上げるサラリとしたルーが特徴的だ。添えられた骨つきチキンには、仕込みにヨーグルトで漬け込むひと手間。そのため、スプーンでもホロホロっと身がほぐれるほどしっとりと柔らかい。黄色く色づいたターメリックライスの上には干しぶどうが2粒。カレーの辛さを和らげるアクセントになっている。

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辛さは1番から5番まであり、2番が中辛で通常の辛さ。3番の大辛・ケッコウ辛い~5番・極辛・ムチャクチャ辛いと好みの辛さをオーダーできる。
「まず最初に味わっていただきたいのは2番の中辛ですね」と川越さん。 もちろん3~5番のカレーでも、辛さの中にも旨みやスパイス感をしっかり感じられる。
食後には、カレーの辛さを和らげてくれる甘くてスパイシーなチャイがおすすめ。酸味の効いたヨーグルトと牛乳でつくるラッシーも本格的な味わいだ。

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自然に囲まれたロケーションも魅力

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「オープン当初はバスの窓から見える木立にむささびが棲んでいて、姿を良く見かけたんですよ。だから店の名前を『むささび亭』にしたんです」。
現在は少しずつ環境も変化し、むささびも姿を見せなくなった。それでも近くの山には今もクマが棲んでいるという。豊かな自然環境もこの店の自慢であり、"訪ねることそのもの"が魅力のひとつの唯一無二のカレーショップなのだ。

※価格はすべて税込
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