郊外ならではの"適度な田舎感"が心地よい
店舗は一軒家を改装したような佇まい。格子の扉を開けると、どこか懐かしさを感じさせる民芸調にまとめられている。店の中央には太い柱があり、それを取り囲む一枚板の円卓が鎮座。板敷の小上がり席や4人がけのテーブル席もある。店内のあちこちに民芸品や鉄器などがディスプレイされていて、壁には賑やかに手書きメニュー。ふるさとに帰ってきたような温かな雰囲気だ。
「最後のチャンス」と覚悟した人生の転機は30歳
店を切り盛りする新井成利さんは、入曽生まれの入曽育ち。そして創業時には"入曽"Tシャツも作ってしまったという"入曽愛"あふれる人物だ。
「なんかん」は今年で12年目。「自分が30歳になったとき『これが最後の転機かな』と考えて」と、数ある選択肢の中からうどん店という新しいステージに進んだという新井さん。
さぞやうどんが好きで店を立ち上げたのかと思いきや「いや、私自身はそんなに特別にうどんが好きだったという訳ではないんです」。
「不動産業を営んでいる父がうどん好きで、本当は自分で店をやりたかったらしいのですが、私が手に職をつけて転職したいと考えていたときに『それならうどんの店やってみるか?』とチャンスをくれて。知り合いのうどん屋さんで1年間修行した後にオープンしました」。
ルーツはおばあちゃんが作ってくれたうどん
西東京から埼玉南部にかけては、武蔵野うどんが文化として根付いている。ここ、入曽でもやはり古くから生活の中にうどんが溶け込んでいたそうだ。
「こどもの頃、よく祖母がうどんを打ってくれていました。おばあちゃんが台所でうどんを打つ姿とその味の記憶が残っていたのも、うどんをやりたいと思ったことのひとつです」。
太麺はもっちりとしてコシがあり、食べごたえがある。埼玉県産の小麦は個性が強く、やや苦味があるそうだ。それが良いという人もいるが、店では多くの人の味覚に合わせるため、群馬を中心とした関東平野のブレンド小麦を使っているという。
また、北海道の地粉を使った色白でつるっとした喉ごしの良い細麺も用意している。
「やはり太麺を召し上がる人が多いですが、量も多いし食べるのも大変なので年配の方や女性は細麺を選ぶ方も多いですね」。
武蔵野うどんのつけ汁はやや甘めの店が多い。しかし、「なんかん」のつけ汁はキリッと辛め。
「個人的な好みもありますが、甘めの汁で強い麺だと最後まで辿り着けない気がするんですよね。だから少し辛めに仕上げています」。
豚ばらの脂の甘みが溶け込むとちょうど良い塩梅になっている。
※価格はすべて税込
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