川越で最初に花手水を始めた「川越八幡宮」
神社や寺院の境内に設けられた手水舎は、本来なら参拝前に手や口をすすぎ、身を浄めるためのもの。しかし現在は新型コロナウイルス感染予防のために、手水の使用を控える社寺が増えています。そこで、使用されなくなった手水舎に花を浮かべて飾る動きが全国に広がり、川越でも市内各所で見かけるようになりました。
川越で最初に手水舎に花を飾り始めたのは「川越八幡宮」。長元3年(1030年)に源頼信により創建された、およそ1000年の歴史を持つ神社です。
「今、川越ではいろいろなところで花手水を見ることができますが、実は川越八幡宮で手水舎に花を飾ったのはコロナ禍になる1年前。毎年梅雨の時期になると境内に色とりどりのアジサイが咲くのですが、シーズンの終わりに咲き残っている花を最後まで楽しんでいただこうと手水舎に浮かべたのがと教えてくださったのは神主の榊原さん。
川越八幡宮では龍が水を吐く水盤と、その足元に置かれた鉢の2ヶ所に花手水があり、毎週金曜日から土曜日の朝にかけて花を入れ替えているそうです。こちらでは花手水をモチーフにした御朱印もいただけるので、花手水めぐりの記念にぜひどうぞ。
花手水を通してさまざまな取り組みを行う「最明寺」
川越八幡宮と並んで人気があるのが、弘長2年(1262年)に北条時頼により開かれた「最明寺」の花手水。山門と絵馬所、寺務所入口、本堂階段上の4ヶ所で、季節感にあふれる愛らしい花手水を楽しめます。花の入れ替えは毎週金曜日に行われているそうです。
こちらでは花手水のフォトコンテストやワークショップを行うなど、参加型の取り組みを行っているのが特徴。山門に置かれた2つの鉢は「カップル花手水」といって、応募によって選ばれた恋人や夫婦、親子や友人などの2人組をイメージした2つの花手水を作成してもらえるというもの。常時募集していますので、興味のある方は最明寺のInstagramを覗いてみてください。
新宿線「本川越駅」からはかすみ野行き西武バスで「水上公園入り口」下車、徒歩6分。本数が少ないので事前に時間を確認してから向かうことをおすすめします。
寺社を彩る個性豊かな花手水をめぐろう
川越市内にはこの他にも多くの寺社で花手水を楽しむことができます。
成田山新勝寺の別院で嘉永3年(1850年)創建の「成田山川越別院」。小江戸川越七福神の恵比寿天としても親しまれています。こちらも手水舎に花が飾られています。生け花のように立体的に活けられていたのが印象的です。
「川越城富士見櫓跡」は、こんもりと木々が茂る高台。川越城の天守の代わりとして使用されていた櫓の跡です。階段の中腹に2つの鉢、階段を上りきると現れる御嶽神社・浅間神社の手水舎の2ヶ所で花手水を見ることができます。
しだれ桜や紅葉が美しい「中院」は平安時代に創立。江戸の川越大火によって消失し、現在の場所に移転しました。境内に置かれた石のテーブルに、ちょこんと小さな花手水が置かれていました。豊かな自然に包まれた庭園に咲く野の花のような愛らしさが印象的です。
室町時代の天文23年(1554年)に開山した「天然寺」。11世紀から12世紀の間に制作されたといわれるご本尊の大日如来像は、市内に現存する仏像の中でも最も古い仏像のひとつで、川越の有形文化財に指定されています。大きな石をくり抜いたような趣のある水盤にたゆたう花が風雅な世界観を紡いでいました。天然寺で花手水が見られるのは毎月1日から5日頃まで。期間が短いので気をつけて訪問してください。
「川越一番街」を中心に、町なかにも広がる花手水
花手水とは本来、寺社の手水舎を花で飾ることでしたが、現在では店や自宅で鉢に花を浮かべて愛でるといった広い意味で使われるようになりました。
コロナ禍になり、これまで花を飾っていたイベントなどが中止になったために行き場を失った花を有効利用しようという取り組みとして広がっているのです。
寿司店では舟盛りに、うどん店では鍋焼きの器を使って、そして漬物店の軒先では花だけでなく野菜も浮かんでいます。訪れる人の心を和ませてくれる花手水。川越の寺社めぐりや散策の新しいスタイルとして、密を避けながらぜひ楽しんでくださいね。
※新型コロナウイルス感染防止対策により、花の入れ替え時期の変更、花手水の中止になる場合もありますのでご了承ください。