スタイリッシュなカフェを思わせる佇まい
愛らしいロゴイラストが描かれた白壁に、淡いブルーのスチール扉。店内はナチュラルにまとめられ、スタイリッシュだけど温かみのある空間です。
そして提供されるカレーは熱々の南部鉄器に木のスプーンとお箸が添えられています。アメリカ西海岸のようなスタイリッシュさに、スパイスのように加えられたシックな和のテイスト。小江戸川越によくマッチした演出に期待感が高まります。カレーの種類は大きく分けて「小江戸川越鉄鍋珈哩飯」(カレーライス)と「鉄鍋焼珈哩飯」(焼きカレー)の2種類。特に人気なのが下の写真の「小江戸川越鉄鍋チーズカレー」1,320円です。ランチタイムはミニサラダ付き。
令和の幕開けとともに "新生Jam"スタート
実はぐるっとプラスでは3年ほど前にもこの店を取材していました。その時、お話を伺ったのは当時オーナーを務めていた瀬谷浩さん。埼玉のカレーカルチャーを牽引する存在です。 「かっこいいカレー屋でありたい」と話す瀬谷さんの力強い言葉がとても印象的でした。
今回店を訪ねると出迎えてくれたのは吉田哲也さん。現在、瀬谷さんから店を引き継ぎ、オーナーを務めています。
元々は川越プリンスホテルで16年、洋食の調理を担当していたという吉田さん。いつかは洋食の店を持ちたいと志していたそうです。ホテルの洋食メニューの中にはもちろんカレーもあり、また仲間内で恒例だった大人数でのBBQではいつも吉田さんがカレーをふるまっていたそう。そこで周りから「いつかカレーの店を出せばいいのに」と勧められ、吉田さん自身も「人が求めるものを形にすることが大切だ」と気づいたといいます。
その後、プリンスホテルを退社した吉田さんはスパイスやさまざまな料理を学ぶために東南アジアへ。数カ月の滞在で十数カ国を回ったそうです。
「日本の常識が通じないほどの文化の違いがありました。料理に関しても味わったことのない、考えつかないような食材を使ったカレーに出合ったり、全く知らないスパイスがあったり。日本にいたらわからなかったことがたくさんあって、勉強になりました」
日本に帰国後、「Jam」川越店の門を叩きます。この店を選んだのは、カレーの食べ歩きをしていた中で一番手の込んだカレーを作っていたこと、そして一番おいしかったことが決め手でした。
「瀬谷さんは知識が豊富な方なんです。カレーのことだけではなく経営面も含め、知らないことなんてないんじゃないかと思うほど。本当にいろんなことを教えてもらいました」
スタッフとして働き始めて1年ほど経った時、吉田さんに転機がやってきます。店を譲渡という形で受け継ぐことになったのです。2019年5月、令和のスタートと同じタイミングでした。
アイデアも継ぎ足しながら進化していく、カッコいいカレーの店
吉田さんは店名を変えず、今まで通りの「Jam」のカレーを提供するスタイルで経営を始めます。「この味が好きで通ってくださっているお客さまがたくさんいるから、そこは変えずに行こうと思ったんです」。その話を聞きながら、吉田さん自身がこの店の味を好きだからこそ、その発想に至ったのだろうなと感じました。
「Jam」のカレーは牛肉のブイヨンをベースに、タマネギやセロリなどの野菜を使い、約15種類のスパイスで風味を整えています。タマネギを大量に使うことで、最初の口当たりに甘さを感じ、その後スパイスの辛さが広がります。さらに、創業以来約20年、毎日継ぎ足しながら使うことで味に深みとコクが加わるそうです。
実はこの継ぎ足しのカレールーの元は、かつて瀬谷さんが修行していた欧風カレーの名店・半蔵門「プティフ・ア・ラ・カンパーニュ」のオーナーである一ノ瀬さんから分けてもらったもの。師匠から弟子へ三代続く、思いの詰まったルーなのです。
でも実は、吉田さんオリジナルのカレーを食べられる日もあります。毎月第2・第4金曜日には、いつもの「Jam」カレーとは一味違う、さらに手の込んだカレーを提供しているのです。この日は香辛料をふんだんに使ったスパイシーな味わいのキーマカレー。メニューはどんどん変化していくそうです。
師匠が作り上げた味を守りながらも、新たな味を加えて進化させる。店もカレーも一緒なのかもしれませんね。
そして以前は週末のみの提供だったテイクアウト用の「お散歩カレー」(600円)は、平日も提供するようになったそうです。「川越の街を散歩しながら気軽にカレーを楽しんでほしい」。そんな大胆な発想も「Jam」ならでは!
散歩が楽しい街・小江戸川越は、カレーでさえ街歩きのお供になってしまうのです。
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。