伝統的な和紙と活版印刷の文化を伝える体験施設
「文星舎」は、2024年1月にオープンした体験施設。この地で創業100年を迎えた「櫻井印刷所」が、和紙や印刷の文化を伝えるために始めました。今回体験したのは活版&和綴体験(4,400円)。所要約2時間で、しおりの活版印刷とオリジナル和綴ノートづくりが楽しめます。
活版印刷とは、金属のハンコのような「活字」を組み合わせて文章をつくり、インクを付けて紙に押し付ける印刷技術です。明治から昭和にかけて印刷の主流でしたが、現在はほとんど使われていません。櫻井印刷所では活字を見学することができます。
講師の佐々木さんに教えていただきながら、まずは活版印刷機を使ったしおり印刷を体験しました。レバーを下げるとローラーが上がり、丸い面に塗られたインクがローラーに付きます。レバーを戻すとローラーが降り、樹脂版にインクが付く仕組みです。
しおりの紙を挟んでもう一度レバーを下ろすと、樹脂版の絵柄と文字が印刷されました。インクのかすれ具合が味わい深く、温かみのある風合いです。「文星舎」マークの下には活字で日付が入っていて、いい記念になりそう。
好きな和紙や糸を選んでつくれる和綴ノート
続いて和綴ノートづくりへ。ノートのサイズはA5とA6の2種類があります。
最初にノートの"顔"となる表紙用の和紙を選びます。この日、用意されていた和紙は約50種類。色とりどりの和紙は見た目だけでなく、厚みや手触りもそれぞれ異なります。表紙と裏表紙で別々の紙を選んでもよいのだそう。
ノートの中身(本文)は30枚の和紙です。10枚1束になった3種類の和紙から3束を選んで使います(A5サイズの場合は二つ折りになった和紙1種のみ30枚)。こちらも3束を同じ種類にするか混ぜ合わせるかは自由。表紙と本文の間に挟む「扉」も、約3種類の和紙から選べます。
和紙が決まったら、綴じ糸の色を決めます。表紙が同じでも、糸の色が違うだけで印象がかなり変わるとのこと。和紙に糸を乗せてみてイメージを膨らませます。
次は角布(かどぎれ)と呼ばれる布。本文の背の上下に、補強のために貼るものです。この布の色次第でまた印象が変わります。
すべての材料を選び終えて、いざ制作開始!
表紙と裏表紙に芯となる紙を貼り付け、四隅を斜めにカットします。この時、芯紙の角ギリギリではなく、2mmほど残して切るのがポイントです。
定規とヘラを使って和紙の四辺を折り曲げ、軽くのり付けします。まずは短辺から。
次は長辺を折り曲げますが、ここは注意が必要です。角をそのまま折ると余計な厚みが出てしまうので、先ほど2㎜残した部分をヘラで軽く広げて内側に折り込みます。「いせこみ」と呼ばれる作業で、このひと手間によって角の部分がすっきりとした仕上がりになります。
表紙と裏表紙ができたら、次は中身です。上から見返し、扉、本文、見返しの順に重ねてクリップで止め、のりで角布を付けます。
表紙と裏表紙を重ねて、糸を通す穴を4か所に開けます。穴あけ位置が描いてあるガイドの上から目打ちをまっすぐ打ち込みます。
ガイドを外し、糸で綴じていきます。糸の通し方は、4つの穴を行ったり来たりして少し複雑ですが、手順を一つひとつ教えてもらいながら迷いなく進められました。
最後に糸を結んだ玉が見えなくなるよう、表紙の裏側に引っ張って隠します。綴じ糸の始まりと終わりがどこなのかわからないのも、和綴のおもしろいところです。
見返しと表紙をのり付けしたら完成です! 趣のある和綴ノートができあがりました。日記を書こうか、思い出のチケットを貼ろうか、使い道を考えるだけでワクワクします。
体験の最後には、お茶とお菓子がいただけます。かわいい和紙に包まれたこの日のお菓子は、川越の老舗和菓子店「亀屋」とコラボした和三盆でした。
今回体験した活版&和綴体験は事前予約が必要ですが、予約なしで体験できる和綴体験(1,650円)もあります。すでに穴が開けられている和紙を糸で綴じる作業を体験でき、30分ほどで完了します。
昔ながらの和紙や活版印刷に触れる体験は、風情ある川越の町にぴったりの思い出になります。ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
※価格はすべて税込
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