川越の風景に溶け込むうどんの新店が話題に

本川越駅の北側に多くのショップや飲食店などが立ち並ぶクレアモール。白壁の蔵が目を引く「小江戸蔵里産業観光館」の先に、今回の目的地「うどん辰未」が見えてきました。

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街の風景に溶け込む、和をモチーフにした前面ガラス張りの店構え。取材に伺ったのは14:30頃ですが、店内には食事する人の姿がちらほら見えます。入口脇の券売機を見ると、メニューのバリエーションもかなり豊富。風に揺れる大きな暖簾をくぐって店内へと入ります。

うどんの魅力にハマり、うどんのおいしさを発信したいと開業を決意

厨房で黙々と麺を茹でているのは店主の小野大樹さんです。小学2年生から大学まで野球に打ち込んだ小野さんは、大学卒業後に都内の信用金庫に就職します。同じ職場で知り合った博美さんと結婚し、30歳を迎えた頃には2人の子宝にも恵まれますが、小野さんの人生を大きく変える出来事が起こります。それは、一杯のうどんとの出会いでした。

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「新橋の勤務先近くにあった『甚三』のうどんを食べたとき、『うどんってこんなにおいしいんだ!』と感動してしまって。ハマってからは週5で通っていました」と語る小野さん。うどんへの情熱はやがて「自分がこのうどんのおいしさを発信する側になりたい」という思いに変わります。「仕事で日々多くの経営者さんと接しているうちに、何かにチャレンジしたくなったんです。『そうだ、うどんで起業しよう』と思って、この世界に入りました」。

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33歳で「甚三」に入社。修業中は朝が早く、毎日始発で都内にある店舗に出勤していたそう。新橋や神田、大門など複数の店舗を渡り歩き、製麺技術やダシの引き方をはじめ、接客、経理といった飲食店経営のノウハウを必死に勉強しました。

厳しい修業と並行し、物件探しも行いました。「川越には家族で何度か遊びに来たことがあって、この街の雰囲気がとっても好きだったんですよね。なので川越市内に絞って物件を選びました」。

厳選した小麦粉で生み出す自慢のうどん。店主が推す2つの味を実食

小野さんのおすすめは「TATSUMIスペシャル」と「肉汁」。「当店は"讃岐×武蔵野"をコンセプトにしていて、うどんの生地には香川県の老舗メーカーから直接仕入れている小麦粉と埼玉県産の地粉の石臼全粒粉をブレンドしているんです」。

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とり天と豚バラ肉が豪華にトッピングされた「TATSUMIスペシャル」(860円)。黄金色のつゆに横たわる滑らかな麺が、ダシの豊かな香りを口に運びます。あっさり目に味付けされた豚バラ肉は「肉問屋さんからいくつも取り寄せたなかで、この豚肉が一番甘味が強くておいしかったんです」というお気に入りの国産豚を使用。とり天は数種のスパイスで下味をしっかりと付けてあり、味のコントラストを高めています。

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こちらはコクと甘味を強めたつけ汁が特徴の「肉汁」(820円)です。「どちらもダシは同じです。『かけ』には薄口醤油ベースのカエシを、『肉汁』には濃口醤油にみりんを加えたカエシを使っています」。つけ汁と互角の存在感を見せてくれる麺は、小麦粉に水と塩を加えて練ったあと、一晩熟成させた宵練(よいね)り仕上げ。茹でる直前に切り出しているため、エッジの立った食感とモチモチの歯応えが自慢です。奥に見える「COEDOさつまいも天」(200円)は、川越を訪れる観光客にもとても人気だとか。噛むほどに芋の甘味が出てきます。

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煮干しは伊吹いりこなど瀬戸内産を数種類。これに昆布や宗田節、サバ節などを掛け合わせ、芳醇な香りをまとったダシを引いています。「修業先で教わった味を、あちこち食べ歩いてさらに磨いていった感じです。ダシやカエシの配合バランスを微妙に調整し、私の中で『これが今のベスト』と思える味に仕上げています」。

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週5で通うほど惚れ込んだ「甚三」のDNAに、自身の舌と緻密な計算を加えて生み出す「うどん辰未」の味。愛する息子と娘の名前から一字ずつ取って、この店名にしたそう。「ロゴにある登り龍の絵柄は、皆さんにおいしいうどんと活力を届けたいという思いを込めました」。

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2025 年1月からは妻の博美さんも厨房に入りました。夫婦、スタッフで力を合わせ「うどんってこんなにおいしいんだ!」を今後も伝えていきたいと語る小野さん。限定メニューや天ぷらのバリエーションを増やすなどの展開も計画中です。11年間務めた信用金庫を辞め、うどん店を開くと決意した当時の小野さんについて博美さんはこう振り返ります。「小さい頃に野球を始める時や進路を決める時は、いつも自分で道を選んできたんですって。だから『うどん屋になる』と言われたときも彼らしいなって。自分でやりたい道を見つけたんだから、よっぽど本気なんだろうなって思えました」。

オープンから日が経つにつれ、リピーターも増えてきています。うどんへの情熱を胸に進化していく「うどん辰未」に、今後も注目せずにはいられません。

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