2人でできること。それがパン作りだった
1995年にオープンした「パン工房 麦ふうせん」。
「そのころはまだ電車が下を走っていたんですよ」と店主の大野和彦さんは話す。元々は電気工事屋をやっていたが、もし何かあって自分が体を壊してしまったら、妻のみさ江さんは困ってしまう。それならば夫婦2人で商売を始めようと考え、パン屋を開くことを思いついた。
パン教室で免許を取り、友達を集めてパン作りを教えていたというみさ江さんとともにお店をスタート。今では和彦さんとともに夫婦2人でパンを焼いている。
食パンは種類豊富。角食や山食だけでなく、高食(高級食パンの略)や大豆イソフラボン、天然酵母のパンなども日替わりでそろう。
お惣菜パンも豊富。午前中で売れてしまうため、午後は品数が少なくなってしまうそうだ。
アイデア炸裂! 楽しいオリジナルパン
昔は120種類もあり、いまは100種類ぐらいに落ち着いたというが、種類豊富でどれにしようか迷ってしまうほど! 「関東風お好み焼き」(259円)や、唐揚げとゆで卵がのった「親子ちゃん」(183円)などユニークなパンも多い。
「どうしても増えちゃってね、もう辞められなくなっちゃった(笑)。 どれか一つがたくさん売れるんじゃなくて、平均的にみんな売れるからね。『あれがほしい』と来てくれるお客さまのために作っていますね」と和彦さん。
新しいパンのアイデアは、デパートやスーパーにいってヒントをもらう。お惣菜を見て、「これをパンに入れたらおいしいだろうな」と考える。パンは何でも合わせられる万能選手。あとはアイデア次第でいかようにもオリジナルなパンを生み出せるのだ。
いちご大福を見たときに思いついたという「いちご大福」パン。つぶつぶのいちごクリームとおもちが中に入っていて、不思議な食感!
「ラウンド」と呼ばれるパン。ちぎってそのまま、スライスして何かを挟んで食べても。
あん、バター、ジャムなどを挟んで食べるコッペパン。なつかしい味に女性や年配の方などのファンが多い。
パン屋は「町の百姓」。仕込みは朝3時から
普段は朝の3時から仕込みを始める。7時からお店を始めるためには、朝が早くなるのは仕方がない。「朝から焼きたてのパンを食べられるのがやっぱり幸せだよね」と和彦さんはほほえむ。
「今は朝起きるのが仕事だね(笑)。パン屋さんは『町場のお百姓さん』って言われるんですよ。パンはすぐにできるわけじゃないから、ひとつのものにどうしても3時間ぐらいかかってしまうんだよね」。
この26年もの間に電車は高架に代わり、高架下には店が増えた。環境の変化にともない、売り上げが減ったこともある。けれど「お客さまの選択肢が増えるのはいいこと」と和彦さんさんは言う。
「65歳に近くなってきて、あと何年できるかなってこのごろ考えるんですよ。母ちゃんと2人で歩けるうちに旅行に行けるといいなと思ってるから、そろそろかなってね」。
予約はひとつからでも受け付けているし、近隣の保育所にもパンを届ける。さらには無料でコーヒーをふるまったりと、常にお客さまのことを考えてきた。けれど、そろそろ自分たち自身のこれからを考えるタイミングなのかもしれない。どうかふたりで無理なく、お店をできるだけ続けていってほしい。
※価格はすべて税込
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※写真、記事内容は取材時(2018年2月7日)になります。