窓いっぱいに桜が見えるパン屋さん
大山昇男さんは毎朝5時の電車でこの「グラン モンターニュ」へ出勤してくる。10坪ほどの小さな店だが、このサイズこそ、大山さんが店を構えた理由だ。
「いろんなところを探して歩いたんですが、小さい物件がなかなかなくて。ここはサイズがちょうどよくて、店の前に電信柱など視界をさえぎるものが何もなかったものですから、駅からどのくらいの距離かも知らないまま、すぐに決めてしまいました」と大山さん。
店を構えたあとにわかったのは、目の前にある木が桜だったこと。店先に置いた3脚の椅子は「飲み物の自販機も近くにありますので、お客さまが桜を見ながらパンを食べられればいいかなと思って」という粋な計らいだ。「そんなに大きい木ではないんですが、店内から見ると桜が窓いっぱいになるんです」とのこと。
教えていたパンと、つくって売るパン
店の佇まいが懐かしく感じるのはパンのラインナップによるところが大きい。大山さんの前職は製菓専門学校の講師で、学校では洋菓子や今どきのおしゃれなパンのつくり方も教えていたが、自身の店でつくるパンはあんぱんやクリームパンなど、いわゆる昔ながらのパンだ。というのも、「今65歳ですが、私が小さい頃から慣れ親しんできたようなパンをつくりたかった」から。
学校で教えていたのはパンのつくり方だけではなかった。商品構成表や作業工程表、それらに基づいた原価計算に、資金繰りの立て方まで。
「実際のところ、自分は今そういうことは全然やってません。店に遊びにくる教え子がまた、『先生は原価計算の鬼だった』なんて、かみさんに告げ口するんですよ(笑)」
たくさんの仲間に支えられて
店名の「グラン モンターニュ」は、グラン=大きい、モンターニュ=山という意味。大山さんのお名前からつけたものだ。
滑舌がよく声も通るのは、さすが元先生。店名を考えてくれたのは長年の友人、ポスターを描いてくれたのも、ウィンドウに飾られている折り紙も、長年の知人の作品だという。取材時に働いていたパートさんは20年来の奥さんの歌の仲間だそうだ。
「あと10年は続けたいので」、今年から休みを1日増やして、週休2日に。「でも、お客さまはこれまでどおりご来店くださいます。ありがたいことです」。大山さんのたくさんの教え子、友人、知人に支えられて、ぜひとも長く、続けてほしい。
※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2017年1月13日)になります。