上質な素材を使ったカレーをリーズナブルに

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越後屋は60年以上前からこの街で親しまれてきた精肉店。国産黒毛和牛のステーキ肉や自家製のローストビーフ、メンチカツなどが並ぶお肉屋さんのショーケースも気になりながら前を過ぎると、すぐ隣に「カレーショップ エチゴヤ」の入り口があった。黄色いロゴマークと"CURRY SHOP"の看板が目印だ。

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板張りのおしゃれな外観のカレーショップの店内は、アメリカンな装飾が施されたカウンターのみの空間。BGMはハワイアンで、どこか南国ムードも漂っている。メニューを見ると「スペシャルビーフカレー」(650円)とあり、その上に「サーロインステーキ」(600円)や「国産特撰豚ロースカツ」(270円)などをトッピングできるシステムとなっているよう。ということは、サーロインステーキをトッピングしたビーフカレーが1,250円で食べられるというわけで、かなりリーズナブルな価格だ。

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店主の高橋雅美さんに聞くと、「うちは肉屋だから上質なステーキ肉の端っこや牛すじ、スネ肉などが使えるんです。中間マージンがないのでお客さんに安く提供できるのも、肉屋ならではですね」とのこと。やはり肉料理は肉屋で食べるのが一番、というわけだ。

牛すじやスネ肉をじっくり煮込む自慢のカレーと定食が人気

おすすめのメニューをお願いすると、ロースカツがドンとトッピングされた「ロースカツカレー」(920円)が登場。さすがはお肉屋さんだけあって、国産豚肉をジューシーに揚げたロースカツのボリュームはもちろん、ベーシックなビーフカレーのレベルの高さに驚く。肉の旨みや野菜の甘さが広がるやさしい口あたりでありながら、最後にピリリとした刺激が残り、何度でも口に運びたくなってしまう。

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開店するにあたって、半年以上かけてレシピを研究したというこのビーフカレーは、国産牛のすじやスネ肉をふんだんに使っているだけではなく、玉ネギやニンジンなどの野菜の甘さも加えて、どこか懐かしい味に仕上げているのがポイント。食べ慣れたおうちのカレーのようでありながら、マネできそうでマネできない、オリジナルなカレーとなっている。お客さまの中には小さなお子さまを連れた方も多く、「他のカレーは辛くて食べられないけど、エチゴヤさんのカレーだったら食べるんです」とお母さんがほほ笑む4歳の常連さんもいるそう。

ほかにエチゴヤならではのメニューとして「ローストビーフ丼」(1,180円)や「サーロインステーキ丼」(1,100円)などもおすすめ。今回紹介してもらったのは、黒毛和牛を真空低温調理で仕上げる「プレミアムローストビーフ丼」(1,680円)。

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自家製の甘辛いタレと卵の黄身をとろりと絡めていただくローストビーフは、しっとり柔らかく口の中でとろける。新潟県産コシヒカリのご飯と一緒に、勢いよくかき込みたくなる味わいだ。

偉大な漫画家の苦楽を支えた越後屋の味

高橋さんのお父さまである先代がこの地に精肉店を開いたのは1957年のこと。1970年に越後屋ビルを建設しテナントを募集したところ、入居を希望したのが当時多忙を極めていた漫画家・手塚治虫さんの手塚プロダクションだった。2階は事務所とアシスタントの仕事場、3階を手塚さんの仕事場として契約し、プロダクションが高田馬場へ移転するまでの数年間をこの地で過ごしたという。

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当時、この建物の3階で『ブラック・ジャック』などの作品を執筆していた手塚さん。深夜まで続く作業の合間に、越後屋の自家製コロッケやソーセージなどを好んで食べていたそう。このころまだ中学生だった高橋さんは、手塚さんの仕事場へ雨もりの修理に行ったことなどを鮮明に覚えているそうだ。今でも手塚さんからいただいた直筆のパネルを家宝にしているとか。

17年前には1階でカレーショップをオープンし、手塚プロダクションが入居していた2階は肉料理専門のレストランへと変わった。今後はエチゴヤのビーフカレーをレトルトで販売する企画があるそうで、現在試作中とのこと。近いうちにエチゴヤの味が自宅でも楽しめるようになりそうだ。

時代と共に建物の姿は変化したが、昭和の偉大な漫画家の思い出を残しつつ、ご近所さんに愛されるお肉屋さんの味は令和の時代も健在だ。

※価格はすべて税込
※営業時間、販売商品、価格等が変更になる場合がございます。
※写真、記事内容は取材時(2019年4月26日)になります。