江古田駅至近、抜群のロケーションで半世紀
レンガ道の商店街・日大通り沿いにある、大きな赤いロゴが目印の白い建物。通りを挟んだ向かいには日本大学芸術学部のキャンパスがある賑やかなロケーションです。
店を訪ねたのは平日の昼過ぎだったにもかかわらず、小さなお子さまを連れたお母さんや学生グループ、会社員風の男性などが代わるがわる訪れ、客足が途絶えることがありません。
現在、店を切り盛りするのは2代目オーナーシェフの赤尾義人さんです。初代であるお父さまがこの場所で店を立ち上げたのが1968年。創業以来、ずっと同じ場所で営業を続けているそうです。アンデルセンのケーキで育ったこどもが、やがて親となりこどもを連れて訪れる。さらに歳を重ねて今度はお孫さんと一緒に店を訪れる人も。まさに街と一緒に成長してきた、江古田の人たちにとっては大切な存在です。
旬のフルーツや地元のはちみつをふんだんに
半世紀という長さにわたりお店を続けてきた秘訣を伺うと、「うちは"街のケーキ屋さん"ですからね。できるだけ価格は抑えつつ、満足感のあるお菓子を提供するように心がけています。だから、『ここのケーキは他のお店よりも大きいね』ってお客さまからよく言われるんですよ」と赤尾さん。
その言葉通り、ショーウィンドウにはボリューム感のあるケーキが所狭しと並んでいて、それだけでもワクワクしてしまいます。さらに印象的なのは、フルーツがたっぷり乗った彩りの豊かなケーキが多いこと。
店の名前を冠した「アンデルセン」(497円)はミルフィーユの上に立派なイチゴがぎっしり。サクサクのパイ生地とふわふわのスポンジ、生クリームとカスタードが折り重なって、食感と味の変化を楽しめるケーキです。
また、季節限定の「デコポンのチーズタルト」(507円)にも、旬のデコポンや木苺が彩りよく、ふんだんにあしらわれています。こちらはフレッシュな甘みのデコポンと、チーズクリームのほんのりとした酸味のバランスが絶妙なケーキ。春の訪れを感じさせてくれる爽やかな味わいです。
さらに、店内には「江古田はちみつプリン」(340円)や「江古田はちみつバターカステラ」(5個入り1,400円)など、"江古田"の名前の入った商品も目を引きます。こちらは近所にある武蔵大学の屋上で養蜂し、採取しているはちみつを使っているもの。大学での養蜂は、10年ほど前から始まった「江古田はちみつプロジェクト」という地域の取り組みです。「地域の土産になるものを作りたかった」という赤尾さんの想いもあり、このはちみつを使うようになったのだとか。
ただ、はちみつの採取量はミツバチ次第。気候などによっても採れる量に差があり、確保するのに苦労する年もあるといいます。それでも生産量を調整しながら、街の名物を作り続けているそうです。
情報をアップデートしながら歴史を刻んでゆく
半世紀の歴史を紡いできた「アンデルセン」。「これまで培ってきたお客さまとの関係を大切にすることはもちろんですが、それだけでは店は続かない」と赤尾さんはいいます。今いるお客さまと同じだけ、新しいお客さまにも来ていただけるように。そのための工夫は、さまざまな部分で見られます。
例えば、ショーケースの片隅に並んだデコレーションケーキ。中には15センチほどの小さなものもありました。50年前に比べ、核家族が増えたことで小さなデコレーションケーキの需要が増加しているそうです。また、人の味覚も時代に伴い変化するもの。レシピもどんどんアップデートしていて、「創業当初からのレシピで作っているのは今ではチーズケーキくらい」なのだとか。
そして、ショーケースと同様に充実しているのが焼き菓子の棚。愛らしいクッキー缶が何種類も並んでいます。実はクッキー缶は、今とても人気があるトレンドアイテム。赤尾さんは専門誌をチェックしたり、パティシエ仲間と情報交換したりして、今どんなものが流行っているのかアンテナを張っているそうです。
店内にディスプレイされていた焼き菓子のアソートも印象的。数種類の焼き菓子が入ったバスケットには、かわいらしい刺繍が施されています。クッキー缶同様、食べ終わった後にも楽しみが残るアイテムは、たくさんのカタログに目を通して見つけたものだとか。こちらも赤尾さんの情報収集の賜物です。
老舗でありながら良いもの、新しいものをどんどん取り入れてバージョンアップしていく。この店が長く愛されている理由がわかったような気がしました。
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