井荻駅2分。レトロな店構えが目を引く人気ラーメン店

環状八号線の「下井草五丁目」交差点からすぐの場所に店を構える「中華そば 麺壁九年」にやって来ました。ちょっと色褪せた木製看板や雷門柄の描かれたのれんがレトロな風情を醸していますが、創業したのは2020年3月と比較的最近です。

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木の扉を開けて中へ。入ってすぐ横にテーブル4席とキッチン前のカウンター4席、よく見ると店の奥にもカウンター3席が用意されています。「お子さま連れの方をあちらに通すことが多いですね。あそこならゆっくり食事ができるんですよ」と話すのは、店主の石岡文仁さん。現在は「中華そば 麺壁九年」と2022年にオープンした系列店「麺や 麟子鳳雛(りんしほうすう)」の2店舗を経営し、超多忙な毎日を送っています。

幼少期は父と食べ歩き。28歳で「ラーメン業界で生きよう」と決意

石岡さんは1982年、店がある杉並区井草で生まれました。90年代のラーメンブームが始まる以前から有名店が立ち並ぶ荻窪にも近く、小さい頃は父親に連れられて「荻窪中華そば 春木屋」や「中華そば 丸福」といった人気ラーメンを食べ歩いていたそう。「親父はうなぎ屋で職人をしていました。休みの日になると『ラーメン行くぞ』って。環七のラーメンブームの時も食べていましたし、大人になってからもラーメンの食べ歩きは趣味ですね」。

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工作やプラモデルなど"ものづくり"が大好きだった石岡少年は、やがて自分でも料理をするようになり、10代の頃は町中華などでアルバイトをしていました。飲食業界で働きながら28歳を迎えた頃、石岡さんは「ラーメンで自分の店を持ちたい」と思うように。すぐさま新宿にある「麺匠 竹虎」の門をたたき、ラーメン業界での修業をスタートさせました。

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「麺匠 竹虎」で3年ほど腕を磨いた石岡さんは、続けて「らぁ麺 はやし田」へ。ここでの約5年間で店長業務はもちろん、限定メニューの開発や新店舗立ち上げなど、店舗経営からプロデュースまでの経験を一気に積んでいったのです。

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「毎日がむしゃらに走り続けてきて、気が付いたらラーメン業界に入って9年目。いろいろ学ばせてもらっていたので、『もうこれで自分の店を出せる』という自信を持てるようになっていました」。そうして2020年3月10日、生まれ育った街で念願の独立を果たします。

印象の異なる自慢の2杯。麺や仕様を変えてさらにおいしく

ここで、「麺壁九年」が誇る2種類のラーメンを実食。じっくりと煮込んだ動物系スープに魚介ダシを合わせた「特製中華そば」(1,450円)と、魚介から抽出した芳醇な香りが優しい「特製いりこそば」(1,350円)です。

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まずは「最近はお客さまの9割がオーダーします。うちの看板商品です」と紹介された「特製中華そば」から。琥珀色のスープにチャーシューやワンタン、味玉が浮かんだ豪華なビジュアル。三つ葉が涼し気に添えられています。スープは「大山どりに鴨と黒豚のゲンコツを加えた動物系スープに、数種の煮干し、アジ干し、イカ干し、シジミなどで取る魚介ダシを組み合わせています」と石岡さん。生醤油やたまり醤油などをブレンドしたカエシは丸みのある味わいを描き、麺にスープの旨味がしっとりと絡み付きます。

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麺は蒲田の「菅野製麺所」から仕入れる細ストレート。「オープンからずっと全粒粉入りを使っていましたが、10月にスープをモデルチェンジしたのと同時に麺も変えました。前よりしっとりとした色気のある麺肌で、スープの乗りもいいんですよ」。

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こちらは「特製いりこそば」。テーブルに丼が置かれた瞬間、煮干しの香りがふんわりと鼻をくすぐります。乾物ダシと煮干油でシャープな味わいを描きます。「魚介の香りを引き立たせるために、中華そばよりも角のある味のカエシを使っています」と言う通り、鮮烈な煮干しの香りのあと、キレのある醤油の香りと味わいが広がっていきます。

誰もが親しみやすい味を求め、鍛錬を続けていく

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2020年の創業から2年後の2022年に2号店「麟子鳳雛」を上井草に立ち上げ、さらに2024年6月には下井草で3号店の立ち上げを予定しているそう。「2年おきなのは、ただの偶然です(笑)。最初にこの店を開いてすぐ皆さまに『おいしい店』と評価していただいて、成長してこれました。私ひとりの力ではここまでの店にはなれませんでした。足を運んでくださるお客さまと、頑張って働いてくれているスタッフのおかげです」。

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店名の「麺壁九年」は中国の故事「面壁九年」に由来しています。意味は「ひとつのことに忍耐強く専念し、やり遂げることのたとえ」。28歳で独立を夢見てラーメン業界に飛び込み、その9年後に自分の店を開いた石岡さんの当時の心境が込められています。厳しい修業中、何度も心が折れそうになったこともあったそうですが、それでも投げ出さなかったのは独立への強い憧れと、「俺がこの世界で生きていくと親父に言ったらただひと言、『がんばれよ』と背中を押してくれたからです」。

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創業から4年が経ち、着実にファンを獲得しながら店舗を拡大してきた石岡さん。味の改良を続けながらも、目指すのは「週に2回は食べたくなるような、誰もが親しみやすい味です」。確かな腕で引き出す素材のおいしさと繊細で優美な盛り付けは、取材中に石岡さんがポツリとつぶやいた「ラーメンだけは妥協できないんですよね」に集約されています。

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