LINEで送る気軽に立ち寄れる地元民の憩いの場
花小金井駅南口の周辺は、大きなマンションや戸建てが立ち並ぶ住宅地。ところどころに畑が残っていて、緑が多いのどかなエリアだ。少し歩くと広大な敷地の都立小金井公園があり、お散歩にも最適。そんな散策の途中でぜひ立ち寄りたいのが「菓子屋 イコナ」だ。
店内に入ると、まずはあちこちに並べられた焼き菓子が目に入る。プレゼントや手土産にぴったりの可愛らしいパッケージに包まれた、クッキーやリーフパイ、ブラウニーやパウンドケーキなど。たくさんの焼き菓子たちに目を奪われているうちに、次々とお客さまがやってきては、中央のショーケースからケーキを選んでいく。
ショーケースには、色とりどりのケーキが常時20〜25種類ほど並ぶそうで、シュークリームやプリンなど手軽に食べられるおやつ系のアイテムも充実している。
振り返ると、窓際のカウンターに３席ほどのイートインコーナーが設けてあり、コーヒーのサービスまである。ショーケースで選んだケーキやシュークリームは、席に座ってコーヒーと一緒にいただくこともできるそう。
ちなみに「菓子屋 イコナ」では、手作りのジェラートも用意していて、通年で味わうことができる。季節限定のさくらやブルーベリーなどのフレーバーも含めて６種類をラインナップ。暑い季節になると、滑らかな口どけのジェラートで涼を求めるお客さまがたくさん訪れるのだとか。
シンプルだけど奥深い！優しさあふれるケーキたち
ショーケースでツヤツヤと輝いて見える数々のケーキの中から、おすすめのものをピックアップしていただいた。
まずはシェフが一番におすすめするという「シブースト」（480円）。シブーストといえば、ベースとなるパイ生地に、カスタードクリームとメレンゲなどを混ぜてふんわりとやさしい食感に仕上げたシブーストクリームをのせ、表面をキャラメリゼした王道のケーキだが、中にリンゴが入っているものが多い。ところが、「菓子屋 イコナ」のシブーストは、間にフレッシュなグレープフルーツがサンドされていてビックリ。滑らかでやさしい甘さのシブーストクリームと、柑橘の爽やかな酸味のバランスが絶妙だ。定番のケーキだと思っていたシブーストの新たなおいしさを発見して、嬉しくなってしまう。
「ピスタチオとチョコレートが好き」というシェフの自信作が「ピスタチオチェリー」（460円）。
洋酒に漬けた甘ずっぱいグリオットチェリーとチョコレートムースの層の上に、色鮮やかなピスタチオのムースを合わせたスタイリッシュなケーキだ。やさしい甘さのピスタチオムースに濃厚なチョコレートムース、チェリーを一緒に頬張ると、口いっぱいに大人の味が広がる。
この時期は特に、チョコレート菓子も充実している。ベルギー産のクーベルチュールショコラを使った生地を、２時間かけて低温でじっくり焼き上げた「テリーヌショコラ」（１枚220円）は、とろける生チョコレートのような食感と、芳醇なカカオの香りが秀逸。さらに、冷凍庫に入れて凍らせるとアイスのような食感に変化して、こちらもまたおいしいのだ。
地元の素材を使った名物スイーツも
「菓子屋 イコナ」は、2019年９月で開店20周年を迎えるそう。オーナーシェフである稲沼孝さんが、数店のパティスリーで修業を積んだ後、この場所に奥さまとふたりで店をオープンした。幼いころはあちこち転校を繰り返してきたという稲沼シェフが、３人のお子さんの子育てをする地として選んだ小平で、「ずっと愛される店を」との想いで見つけたのが花小金井のこの場所だったのだとか。
店の近所には日本で初めてブルーベリーの栽培を始めた「島村ブルーベリー園」があり、ほかにも梨や桜など、小平の名物は数多い。そこで、地元の素材を使ったスイーツを開発して売り出したところ、手土産やプレゼントにいいと好評を博した。現在では、桜の葉を混ぜ込んだ「小平グリーンロードリーフパイ」と、小平産ブルーベリーのゼリー「果じゅれ」の２品が、小平の商工会が認定する「コダイラブランド」に選ばれるまでになった。
春には桜のスイーツを、夏にはフレッシュなブルーベリーを使ったタルトやケーキ、ジェラートが登場して、訪れたお客さまの目と舌にいち早く季節を運ぶ。地元の良質な素材をふんだんに使って丁寧に作り上げたお菓子には、シェフの小平への愛がいっぱいに詰まっているのだ。そんなスイーツを求めて、今日も地域の人々がこの店へ集まって来る。
温かな気持ちで店を後にすると、公園やブルーベリー畑の緑がまぶしく感じた。地元愛にあふれるパティスリーがあるこの街に住む人が、ちょっとうらやましくなった。
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