創業からほどなくして、埼玉のラーメン界をけん引する店に
長らく続くラーメンブームの中、埼玉県内でもクオリティの高いラーメン専門店が続々と誕生しています。今回訪れた「自家製手もみ麺 鈴ノ木」は2018年10月に創業するや、口コミでその評判が広まり、多くのグルメサイトやラーメン専門誌などで高い評価を得ている淡麗系の人気店。カフェのようなおしゃれな雰囲気の店を切り盛りするのは、店主の鈴木一成さん夫婦です。
鈴木さんは1983年に埼玉県幸手市で生まれました。小学2年生から高校、社会人になるまで野球を続け、夫婦ともに大の埼玉西武ライオンズファン。所沢市内に店を開いたのも「いつかライオンズの選手が食べに来てくれるかも」という思いから。そんな野球とラーメンをこよなく愛する鈴木さんが生み出すのは、実に繊細な佇まいのラーメンです。
小麦香る自家製麺。ひとつひとつ手もみを加えて食感出し
都内の有名店にて6年ほど修業する間、開店資金を貯めながら休日には夫婦でラーメンを食べ歩き、メニューの方向性を決めていきました。ある日のこと、都内の有名店で口にした麺に感動し、鈴木さんは「自分もこんな麺の店をやろう」と決心。何度も店に通って店主と交流を深めながら、製麺のノウハウはもちろん、ラーメン職人としての心得などを教わっていきました。
早朝5時、鈴木さんの1日は製麺作業から始まります。「前田食品」から仕入れる専用粉に水とかんすいを混ぜ、伸ばした生地を製麺機でカット。水の配合割合を4割以上に設定した多加水麺です。
「季節や天気で変わる湿度によって変動しますけど、平均して冬場で47%、夏場は42%くらいの割合です」。
打ちたての麺は香りが強くてほぼストレートの状態ですが、茹でる直前に手もみを加えます。「ラーメンの時は両手に挟んでもみ、さらに潰して強いウェーブを付けます。まぜそばはもむだけ、つけ麺は潰すだけです」と鈴木さん。メニューごとに手もみの工程を変えることで食感の違いを持たせています。
素材は3種の地鶏と水のみ。濃厚な旨味が広がる珠玉の一杯
作っていただいたのは醤油味の「味玉ラーメン」(1,000円)。豚と鶏のチャーシューや細切りメンマなどの具材が整然とトッピングされた美しいビジュアルに感動します。丼から上がる湯気とともに鶏の優しい香りが漂ってきました。まずは自慢の自家製麺から。不規則なウェーブの付いた麺は驚くほどモチモチの食感で、噛むほどに小麦の甘い香りが広がっていきます。
黒褐色の醤油スープは、その見た目とは裏腹にとてもふくよかな味わいが特徴。「スープの素材は、創業時から使っている『山水地鶏』にさつま鶏の『黒王』と『大山どり』の3種類だけです。下処理をきちんとするので、臭み消しの香味野菜も入れていません。地鶏と水オンリーの鶏清湯です」。丸鶏やガラのほか、手羽元、手羽先など肉の部分を多めに入れることで深みのある鶏の旨味を抽出しています。
優しい味わいのラーメンに対し、「まぜそば」(900円)は甘辛い特製ダレと自家製ラー油で力強さを演出。キレのあるブラックペッパーのあとに、おろしニンニク、フライドオニオンが鮮烈な香りを添え、プリっとした麺の食感と相まってインパクトのある味わいです。
今までも、これからも妻と2人で。この味を極めていきたい
創業からわずか3年半の間に、鈴木さんは何度もスープ素材を変えてきました。
「ラーメンがこれだけ多様化してきて、どの店もレベルがどんどん高くなっていますよね。僕にとって良い刺激なんです」。スープのみならず、2022年1月には中力粉の配分を増やした「鈴ノ木専用粉」に切り替え、自家製麺はさらに風味と食感が豊かになりました。
多くのファンが定着した今、鈴木さんの中ではさらに進化したいという思いが強くなっています。「自分の味を極めたいという思いと、妻の支えがあるからです」と言い切る鈴木さん。異業種からラーメン業界に入り、独立したいと思った時に背中を押したのは、「あなたのやりたいことをやってみたら?」という奥さまの言葉だったそう。
新型コロナの流行によって営業時間の短縮を余儀なくされながらも、日々向上心を持って厨房に立ち続ける鈴木さん。約6年にわたる修業先での経験や出会いに感謝しつつ、これからも夫婦2人で沢山の人を笑顔にしていきたいと夢を語ってくれました。
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