口に入れれば、ホロリと溶けて感じる上質な甘み
「もともと工芸品や民芸品が好きなのですが、先祖のお墓がある香川県で"木型"に出合い、これを何かの役に立てられないか......そう思ったのが開業のきっかけでした」
そう話すのは、店主である三浦和子さん。香川の名峰「象頭山」から一文字とり、東京支部の気持ちでという思いを込めて「象東」を2011年にオープン。四国の特産物である和三盆糖を使ったお菓子と、伝統的な工芸品の魅力を関東に発信する、全国的にも珍しい専門店です。
看板商品である「御陽菓詞」は、香川県と徳島県でつくられる和三盆糖を、熟練の職人が彫り上げた菓子木型で成形したもの。ちなみに和三盆糖とは、その精製過程において"盆の上で三回研ぐ"ことからそう呼ばれるようになったそう。御陽菓詞の一つひとつは松竹梅や紅白の鯛、貝、菊など、移ろう日本の四季と文化を表現する形を成しています。
口に入れると、やわらかで繊細な甘みを伴いながら、ホロリとほどけて体内に溶け込んでいきます。見て楽しい、食べて楽しい、でも消えるときは一瞬。感性をくすぐられる儚さがたまりません。
「お砂糖に水分を入れて、型に入れて固めて取り出して、10日間ほどかけてまた水分を抜く。いまつくっているものがお店に並ぶのは、検品や袋詰めを経て、2週間後くらいかかります」と三浦さん。まさに、ここでしか味わうことのできないスイーツです。
大切な人への思いを、"形"にして贈る
一昔前までの日本では、お祝いのときに鯛の形をした砂糖を贈る文化がありました。今でこそ砂糖は一般流通し安価で手に入るものですが、もともとは高級な貴重品であり、"幸せのおすそ分け"として憧れのを送り合っていたそうです。「象東」の御陽菓詞は、そんな思いを今でも大切に受け継いでいます。
「言ってしまえば御陽菓詞も砂糖の塊ですが、こうして"形"にして贈ることで、贈る人の心や、大切な人への思いなどがそこに込められ、意味のあるものになっていくと思います」と三浦さん。
「象東」の御陽菓詞は、自宅用として購入される方もいますが、贈答品としての人気が高いとのこと。気品のある木箱に詰められたセット商品も多数そろえていて、引出物からプチギフトまで、多様なチョイスが可能になっています。こうした詰め合わせで販売しているお店は、全国的にもかなり珍しいとのこと。
中でも、東久留米市をモチーフにしたセット「干菓子くるめ」(10個入り1,350円)は、ぜひ手にとってほしい商品のひとつ。東久留米が「関東の富士見百景」に選ばれた場所であることに由来した「富士山」や、市の花である「つつじ」、市の鳥「オナガ」、竹林公園の「竹」や「湧き水」などをモチーフにした御陽菓詞がセットになっています。
オーダーメイドの対応も可。特別な日の贈りものにぜひご相談を
「茶道をなさっている方がお菓子選びをする際には、そのご趣旨に沿うように、オーダーに合わせておつくりすることがあります。現在は約200種類のモチーフの木型がありますので、結婚式の引出物として、お二人のご出身に関わるものを入れておつくりするということもありました」と、オーダーメイドの相談も可能とのことです。
さらに、木型からつくるというケースもあるから驚きです。現在、菓子木型をつくれる職人さんはわずか数人。新しい意匠の木型も定期的につくっているそうです。
ちなみに御陽菓詞以外にも、おみやげとして購入できる商品があります。中でも、"みゃおくじ"付きの「まねきねこもなか」(2猫入り540円)は人気者のひとつ。餡が別添えになっているため、もなかのサクサクの食感を楽しむことができます。アイスと一緒に食べるのもおすすめです。
「最近では、海外へのおみやげに購入される方も多くいらっしゃいます。軽くて荷物にならないこと、日持ちすること、そして日本らしいこと。外国の方が持ち帰ったり、日本から海外へ行かれる方が持って行ったりと、そういう方のニーズによく合っているんです」と三浦さん。
御陽菓詞は一つ単位(120円、二色使いのものは130円)でも購入可能で、組み合わせも自由。色鮮やかでかわいらしく、意匠もさまざまです。店内では試食も可能なので、ぜひお店へ足を運んでいただき、目と口で楽しめる"食べる工芸品"をご賞味あれ。
※価格はすべて税込
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