文明開化の象徴「ガス灯」を間近に感じる
「ガスミュージアム」は、都市ガス事業の歴史や暮らしとガスの関わりを教えてくれる歴史博物館。
赤レンガが美しい「ガス灯館」と「くらし館」の2つの建物があり、どちらも入場無料でどなたでも見学することができます。
「建物そのものも展示物のひとつです」と教えてくれたのは学芸員の相良さん。どちらの建物も、明治時代に実際に使われていた東京ガスの建物を移設・復元したものなのだそう。
「ガス灯館」では、明治の文明開化によりイギリスから伝わってきた「ガス灯」をはじめ、ガス事業の歴史について学ぶことができます。2階はギャラリーになっていて、約1万4千点の収蔵資料をテーマに合わせて展示する企画展も定期的に行われています。
館内で人気の催しは、1日3回(11時、14時、15時)行われているガス灯の点灯実演。
これは「魚尾灯(ぎょびとう)」と呼ばれた、魚の尾のような形をしたガスの灯りです。火の出口に切り込みを入れて炎を広げることで、より明るくすることができます。ガスのない時代は街中でも蝋燭(ろうそく)や行灯(あんどん)を使うことが主流でしたが、それらに比べて非常に明るいガス灯が登場したことで暗い夜道も歩きやすくなりました。
こちらは、炎が灯ると花火のように華やかに彩られる「花ガス」。明治時代の人たちもこんなふうにイルミネーションを楽しんでいたんですね。
現在は間近でガス灯を見られる機会はほとんどないので、貴重な体験になること間違いありません。
灯りから熱へ、暮らしに寄り添うガス
「くらし館」は明治に建てられた東京ガス千住工場の建物が使用されています。
明治初期に灯りとして使われていたガスは、徐々に料理や暖房器具、お風呂など暮らしのさまざまな場面で使用されるようになりました。
シンプルなガスコンロですが、現代のものとあまり変わらない姿です。
「薪や炭を使うよりも簡単に火が起こせて、火加減もつまみひとつで調整できるので調理がしやすく、簡単に消すこともできるので便利になりました」と相良さん。
こちらはコンロ、グリル、オーブンが一体になったガスレンジ。元内閣総理大臣の大隈重信邸に導入されていたガスレンジと非常によく似た形をしています。それまでの薪や炭に比べ、灰や煤も舞わず衛生的で便利なガス機器は憧れの的でもありました。
当初はイギリスなど海外製のガス機器が使われていましたが、少しずつ日本の暮らしにあったガス機器がつくられるようになり、日本初のガス機器特許商品である「ガスかまど」が開発されたのは明治35年のこと。一般家庭に普及するなかで、見た目は火鉢そのままの「ガス火鉢」など、当時の人々の暮らしになじむデザインのガス機器も登場しました。
ガス冷蔵庫、ガス湯沸器、ガス炊飯器など、デザインや利便性だけでなく、安全機能も向上させながらガスは進化を続けます。昭和の家庭風景を再現したコーナーは見学の方にもとくに人気のスポット。
「人々の暮らしの中にあったものを展示しているので、見てくださる方によってさまざまな思い出があります。それらを語り合う方や、ご自身とガスとのエピソードをスタッフに教えてくださる方もいらっしゃいます」と相良さん。
東京ガスの初代会長である渋沢栄一氏のヒストリーも展示されています。
このほかにも、災害時などの異常時に緊急停止するガスのマイコンメーターの復帰体験ができるコーナーも。ガスが私たちの暮らしにどのように役立ってくれているかを知ることで、いざというときに備えることも大切です。
ガス灯のあるロマンチックな景色を楽しむ
館内だけでなく、中庭の「ガスライトガーデン」も見どころの一つ。実際に使われていた17基のガス灯が点灯しています。日本に来たばかりの明治初期の横浜のガス灯や、イギリスのロンドン、フランスのパリで使われていたものも。
灯りがともる夕方頃に訪れ、写真撮影をされる方も多いのだそう。そんな方におすすめのプランを伺うと、「冬の今の時期ですと15時の点灯実演を見て、館内をぐるっと回られてからの16時半頃は灯りが綺麗に見えると思います」とのこと。夕暮れのロマンチックな風景を見たい方は、閉館間際までのご滞在もおすすめです。
ミュージアムの入り口には桜や紅葉など季節ごとに楽しめる植物も豊富です。
「資料館だけでなく、ぜひ風景やお庭も楽しんでいただきたいです。広場のベンチは飲食も可能なので、暖かい時期にはピクニックもおすすめです」と相良さん。
ガスの歴史を振り返り、現在、そしてこれからのエネルギーとしてのガスのあり方を知ることができる「ガスミュージアム」。美しい景色の中でたくさんの学びを得られる場所です。お一人でもご家族でもお友達とでも、ぜひ訪れてみてくださいね。
※営業時間、体験内容、価格などが変更になる場合がございます。